鍾会、父親の酒を盗み飲みするの巻

鍾毓と鍾会の兄弟がまだ子供だったころのお話。

父親の鍾繇には愛飲していた薬酒があったのですが(養○酒のようなもの?)、日頃、父がその酒を飲む姿を見ていた兄弟は、自分たちもあれを飲んでみたい!という好奇心を持っていました。

ある日の昼下がり、鍾繇は昼寝をしていました。それを見つけた鍾毓と鍾会は、チャーンス!とばかりに、保管してあった酒に忍び寄り、容器のフタを開けて飲もうとしました。が、悪いことできないものです。子供たちの動く気配を察したのか、鍾繇は目を覚ましてしまったのです。

目を覚ましてみれば、兄弟そろって自分の酒を盗み飲み。やれやれと思いながら、鍾繇はその光景を寝たフリをしながら薄目を開けて眺めていました。父親に見られているとも気がつかずに、コソコソと行動している我が子の姿といったら……。

そこで鍾繇は「おや?」と思いました。薬酒に手をつける直前の鍾毓と鍾会の行動が、ちょうど対照的だったからです。鍾毓はまず拝礼をしてから酒に手をつけ、鍾会は礼も無しに飲み始めたからです。同じ礼儀を教えてきたはずなのに、この差は一体?

その場は見逃しておいた鍾繇は、後になって兄弟に尋ねました。
まず鍾毓に、「なぜ拝礼をしてから飲んだのかね」

バレてた~! それでも嘘はいけません、鍾毓は正直に答えました。
「お酒は礼には欠かせないものです。盗み飲みだからといって、敢えて拝礼しない…というわけにはいきません」

今度は鍾会に尋ねます。
「どうして拝礼をせずに飲んだのか?」

鍾会はシレッと答えました。
「盗みというものは、もともと礼から外れている行動ですから、拝礼をしませんでした」

…アナタは、どっちの答えがお好きですか?



「言語12」より。
曹丕に会いに行く話といい、素直(?)な鍾毓、それに比べて……というような対比の話が続きます。
ちなみに同じ言語の4に、孔融が昼寝をしているときに、彼の2人の息子が酒を盗み飲みする話があります。この話では、兄が拝礼をせずに飲んだ弟に対して「なぜ礼をしないのか」と尋ね、弟が「どうして盗人が礼儀を守る必要があるのか」と答えています。 使いまわし?

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