4日目・黄色くない大黄河

白塔山公園→→炳霊寺石窟→→蘭州牛肉麺→→高速鉄道宝蘭旅客専用線・西宝旅客専用線→→西安市

蘭州市と白塔山公園

白塔山公園の頂上からやってきました蘭州。
甘粛省の省都です。現在、地下鉄鋭意工事中。余裕の海抜1500メートル超え。真冬の訪問のため、夜が明けて空が白みだすのが朝8時ごろ。昼間でも氷点下で、景色が見るからに寒々しいです。湿度の低い地域で寒気がストレートに骨身にしみる反面、夏は35度の暑さでも日陰にいれば過ごしやすいのではないでしょうか。

蘭州は有数の工業都市で大気汚染が深刻な問題となっていましたが、工場群を郊外に移転させたことで大気汚染はだいぶ改善されたとのことです。
…それは今、郊外の大気はどうなっているのですか?

上画像は蘭州市街を黄河の対岸に見下ろす白塔山公園の頂上から撮ったものです。蘭州市は背後に山・前方は黄河に挟まれた地形の中にあり、街が非常に横長です。約50キロもある東西の幅に対し南北は平均約6キロ、一番狭いところは幅1キロほどですとか。中央に架かっている中山橋は黄河最古の鉄橋だそうです。

白塔そして黄河。間近で眺めるのは人生初。オカリナの音色が脳内を巡るのは年のせいか。
黄河が青海省から発して初めて接する大都市が蘭州です。上流域の蘭州では黄河がまだ黄土をあまり含んでいないので黄色くなく、人々の生活のための水も黄河から取っています。

白塔山公園は頂上に白い塔があることからをその名で呼ばれます。モンゴル帝国の時代、チベットからチンギス・ハーンのもとに遣わされた僧侶がモンゴルへ向かう旅の途中に蘭州で亡くなり、供養のために建てられたとのことです。現在の塔は明代のもので、最初は白かったと思われる塔が年月の経過で黄土色っぽくなっています。左手前の石碑はケースで保護されています。

頂上からの眺めもよく、暖かい季節にはたくさんの人が訪れる場所なのではないかと思います。登山がキツイ人のためのリフトもあるとのこと。
なお冬季は営業休止。

山の中腹までマイクロバスで上り、途中から徒歩登山です。頂上には管理係の初老の女性が1人いるだけでした。実質貸し切り。オフシーズン観光の最大のメリットがこれです。
ただし休館・冬季休止などのトラップに注意。

炳霊寺石窟

炳霊寺石窟に接近中白塔山公園観光後は蘭州市街を離れ、バスが走ること約50キロ。やってきたのは黄河をせき止めている龍家峡ダム。

石窟に行くのになぜダムかといいますと、炳霊寺石窟(臨夏回族自治州永靖県)へ行くには、このダムのそばの船着き場から船で行くからなのです。かつては炳霊寺への道路があったそうなのですが、1968年にダムが完成した際に町ごと沈んでしまったのだとか。

船着き場の敷地に入るべく閉ざされた門に近づくと、中から係員の女性が1人現れました。ガイドさんとのやり取りの後、ようやく門を開けてもらいます。
さすがオフシーズン。客が誰もいません。

船着き場で待つことしばし、船を操縦するお兄さんが現れました。10人も乗れば満杯の小さな快速船で石窟へ向かいます。ここから黄河を上り、更に50キロ。黄河北岸の大寺溝の西崖に炳霊寺石窟があります。こちらも、シルクロードの一部として世界遺産に登録されています。
小さめ仏像群船を降りて地面に足を付けると、彼方から我々に向かってダッシュしてくる物売りの女性がいました。気温がマイナス9度ほどにもなる寒い中、どこで待機しているのでしょうか…。

西魏の時代に開かれた炳霊寺石窟は、北魏・北周・隋・唐・宋・西夏・元・明・清と長きにわたって少しずつ仏像を増やし、現在は185の石窟、776の仏像、912平方メートルの壁画が残っています。仏像のサイズは、手のひらサイズの小さいものから下の画像に写っている大仏のように高さ27メートルと巨大なものまで様々です。
拝観ルートは上寺・下寺と2本あり、大多数の仏像は下寺に集中しています。今回我々が拝観したのも下寺ルートです。ちなみに「炳霊」はたくさんの霊という意味とのこと。

湿気が少ない場所だった(過去形)こともあり保存状態は良かったのですが、ダムを作ったことにより湿度が上がり、風化のスピードが上がってしまったとのことです。一部の仏像は既に表情が読み取れないほどになっています。

大寺溝 石窟遠景
 左画像=大寺溝。左の崖面に石窟。黄河と地続きで、水量によっては水が流れ込む事もありそうな地形
 右画像=観覧ルートは下のグレーの通路と、すぐ上の桟道の2本

周囲の石林がなかなか圧巻です。

炳霊寺石窟観光中は、他の観光客が誰もいない貸し切り状態。警備のお兄さんも暇すぎるのか途中まで付いてきて、「ここ崩れやすいから頭上注意ね」とアドバイスを送るほど。
一通りの観光が終わり帰ろうという頃になって、ようやく黄河対岸に見える別の船着き場からやってきたカップル登場。本当に炳霊寺への陸路がないんですね。帰りの船も同じお兄さんです。操縦士のお兄さん、我々の観光中は船体を洗っていたようです。

蘭州牛肉麺〜西安

蘭州牛肉麺蘭州といえば蘭州牛肉麺。麺好きとしてはこれは外せません。永靖県の回族の店で蘭州牛肉麺を食べました。ふふふふふ。画像は牛肉を載せる前の状態で、左側で見切れてる牛肉をトッピングしてからいただきます。

ラー油がたっぷり効いてるので辛いは辛いのですが、牛肉ベースのスープがあっさりしているので胃がもたれません。トッピングの血抜き牛肉もくどくない。割と好み。都内にもいくつか蘭州牛肉麺の店があるようなので今度行ってみたいです。

蘭州市内に戻り、高速鉄道の時間まで余裕があったので夜市に行ってみようとするも、道を間違えたらしくただの散歩になってしまいました。代わりと言うにはやや寂しいですが、小さめの超市で哀愁漂わせながらお茶を濁すことしばし。

その後夕食を取ってから再び蘭州西駅へ。今度は西安北駅まで乗っていきます。宝蘭旅客専用線・西宝旅客専用線という路線上の区切りはありますが、ここは直通する列車が多いです。約700キロ弱も離れた蘭州から西安まで約3時間。すごい時代になったものです。途中で停車した天水南駅でまた感慨に耽ったのはさておき。

西安北駅そして着いた西安北駅。こちらも西安市街からは離れた場所に駅があります。
外に出てみると、夜の西安はみぞれ混じりの小雨。お陰で埃っぽさがかなり緩和されていました。西安だあああ!と脳内テンションは来るものがありますが、西安観光しないで帰るんだなこれが。翌朝には週3便しかない直行便が飛び立ってしまいます。

城壁内まで移動し、西安皇城豪門酒店に宿泊。何やらお高そうなホテルです。しかし、西安着が深夜近かったことと翌日の帰国便が午前8時10分発と朝早いために、ホテルを堪能する時間がまったく取れなかったのは残念です。朝食バイキングが始まるよりも早い時間にホテルを後にし、西安咸陽国際空港へ向かいました。

西安はライトアップが大好き。去年より増えている気がする。

余談メモ。

蘭州は土が脆いため窰洞は無いらしい。

余談メモ2。

龍家峡ダムは蘭州の水害防止と、周辺地区への計画的配水を目的に作られました。このために立ち退いた人々には何の補償もなしで泣き寝入り。約30年後に建設された長江の三峡ダムは立ち退く住民に多少の補償があったそうで、これを知った龍家峡ダムで立ち退いた人々は「それなら俺達にも補償してくれ!」とお上に訴えたのだとか。その結果、いくばくかの補償を得たそうです。

余談メモ3。

高速鉄道は蘭州西・天水南・宝鶏南・西安北と、方角の付いた駅名が多いです。直線優先で線路を敷いたので、元々ある在来線の駅からだいぶ離れた場所に駅があるのです。日本で例えるなら、横浜と新横浜や大阪と新大阪のように。逆に、秦安のように高速鉄道が来たことによって初めて鉄路が開かれた街も多くあります。

余談メモ4。

宝蘭旅客専用線駅名覚え書き。蘭州西−楡中−定西南−通渭−秦安−天水南−東岔−宝鶏南
西宝旅客専用線駅名覚え書き。宝鶏南−岐山−楊陵南−咸陽秦都−西安北


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